〉Vol.14 笑い、自由、リラックス…そのままの自分で楽しむ姿(この記事です)
「不登校は、本人の心の叫びを表した結果。小さい頃からずっと疑問を抱き、納得いかないことをさせられてきた結果だと思うので、早く気づかされてよかったと思います」と語る琴子さん。そこにはいったいどんなドラマがあったのか。琥博くんとのこれまでと、これからについて、乳児期からたどってお伺いしたお話を、連載でお届けします。
現在の様子と心境
「親として、子どもが学校に行けたらいいな、行ってくれたらいいなという気持ちは、もうありません。
今年5年生になった息子は、『笑うことが増え』『ネガティブな発言が少なくなり』『ゲームでも、友達とオンラインでつながって楽しく遊ぶようになった』」と琴子さん。
YouTubeや動画(アニメ)、テレビからも、様々な情報やアイデアを吸収しています。
「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画で見た「イカ墨スープ」を完全オリジナルで創作したり、ある日はスライスチーズの上に明太子や刻んだハムをのせてレンジでチンしたり。
またある日は、琴子さんが出先から戻ると、『ひよこかんべつさぎょう、のうぎょう、ライター、ブログ(在宅ワーク)』と書かれた画用紙がありました。
琴子さんが尋ねると「今からでも出来る仕事!お母さん仕事やめたから、ボクでも何か役に立つかなと思って」と琥博くん。
『テイコウペンギン』というYouTubeのチャンネルからの情報だったようです。
またある日は、芸能人がメルカリに出品していくら稼げるか、という番組がテレビであったのを見て、琥博くんから「ボクたちも売ろう!」と動き出しました。
「息子の行動力から背中を押されたようなメルカリ、私一人では不安が先に立ち、行動できてはなかったと思います。」と琴子さん。
親子でもたくさんの遊びをしています。
ごっこ遊びで使うキャラクターを書いてくりぬき、昆虫、魚、ドラゴンなどバリエーションが増え、幅広テープでラミネートのようにしたら、次これもというかんじで、次第にそれをひとりでたくさんつくっていて、それを使って遊んだり。
ごっこ遊びは苦にならないかどうかという質問に対しては、
「息子の創造性に比べ、私はバリエーションがないので、セリフ指導が入ります。そうすると思考が回らず、なんて想像力がないんだろうと、長くなると苦痛になるときがあります。すると察してくれて『今日はここまでにしとこうか』と言ってくれたり」
と琴子さん。
琥博くんの笑いが増えて、自由に歌ったり踊ったり、オンラインでつながるお友達とのゲームでもリラックスしてそのままの琥博くんで楽しんでいる姿を見ながら、安心できる場所が少しずつ拡がっていくんだろうなという思いが実感として湧いてきたのがここ最近のこと。
振り返ってみて
「最初は不安があったよな……」と琴子さんは振り返ります。
息子に、自分が責められるようなかんじだったとき……
責められると落ち込み、自分の気持ちの持っていきようがわからずもがいていたな……。
感情の起伏が激しく、癇癪の後塞ぎ込む琥博くんに声を掛けると、ネガティブな発言をすることがあった時期は、「そのくらい苦しいんやね、ツラいんやね」と声を掛けて落ち着くまで見守ることしかできなかったな……など。
琴子さんが、琥博くんの気持ちを受け止め、寄り添えるようになったのには、琥博くんの体に表れた症状が心理的なものからと知ったり、
『お母さんは僕を苦しめる』など、はっきりした言葉で繰り返し訴えられたことで、ハッと気づいていったことなどがありましたが、
他にも、HSCを知って、琴子さんがご自身の子ども時代を振り返ったことも、背景にあったのでした。
つづく
→ Vol.15 私もHSCだった を読む