〉Vol.12 夫婦の話し合い。家族みんなで幸せになりたい気持ちを伝えることを諦めたくなかった(この記事です)
「不登校は、本人の心の叫びを表した結果。小さい頃からずっと疑問を抱き、納得いかないことをさせられてきた結果だと思うので、早く気づかされてよかったと思います」と語る琴子さん。そこにはいったいどんなドラマがあったのか。琥博くんとのこれまでと、これからについて、乳児期からたどってお伺いしたお話を、連載でお届けします。
子どもが学校に行けないことを、お父さんに理解してもらうことができず、子どもが心の傷を深めてしまったり、夫婦や親子間の溝が深まるなど、多くのお母さんが、葛藤や苦悩、ストレスを抱えています。
琴子さんも例外ではありませんでした。
夫婦、どう関わるか
琥博くんが、学校をお休みするようになった頃は、お父さん(ご主人)からの理解が得られませんでした。
首をかしげながら「小学2年で学校に行けないのか」と言われたりしたこともあり、そのときは、他人事のように感じられました。
琴子さんが悔しかったのは琥博くんを追い詰めるような言い方でした。
反対に、琥博くんから責められるような言い方をされると、キレたりすることもありました。
あるときは、「息子を守らないと」「別れよう」と思い、実家へ行ったこともありました。
そのときは、琴子さんのお母さんから、夫婦で話すことを勧められて家に戻りました。
ふて寝しているお父さんに
「話しよう、昨日のことなんだけど」
と切り出し、考えを伝えようとしましたが、
「俺が悪いのか」
と逆ギレし、そのときはわかってもらえませんでした。
琴子さんは、精一杯の気持ちで、
「子どもを追い詰めて何になるの? 子どもに対して喧嘩をしかけるように。あれは言ってほしくなかった。あれは悲しい」
と伝えました。
険悪な雰囲気が続きました。
ところが、3日ほど経った日、お父さんは、仕事帰りにアイスを買って帰ってきて、急に変わっていた……、そういうことがありました。
諦めたくない
その後も、何度となく琥博くんとお父さんがぶつかり、険悪な雰囲気が数日続く、ということが繰り返されてきました。
夫婦お互いに話し上手とは言えず、会話が少ない方だと言う琴子さん。
当初は、わかってくれないという思い込みもあり、伝えることを諦めていた琴子さんでしたが、勉強会で、
「夫婦にもお互い愛着関係における傷があり、影響をもたらし合う」
といったことを学んだり、インナーチャイルドにも気づきだして、
「これではだめだ。向き合おう」と、心に思いました。
そして、愛着の傷を修復させるような関わりを心がけようと意識するようになりました。
うまく伝えられないもどかしさや、怖さがありましたが、家族みんなで幸せになりたいという気持ちを伝えることを諦めたくなかったのです。
琴子さんは、琥博くんのことをわかって欲しいという思いで、HSCのことや、「安心の基地になるための~しない10項目(こちら)」など、書き出したものを渡して読んでもらったり、自分の思いを伝えたりしてきました。
琴子さんが真剣な話し合いをしようとすると、お父さんは、責められてるような気持ちになるようで、黙り込んだり、怒ったような態度になったりで、ほとんど話し合いにはなりませんでした。
「そうじゃない…言いたいのは…」と、琥博くんの苦しみを、何とかわかってほしいと代弁するようなかんじで、とにかく自分の感情は抑えつつ、繰り返し伝えることしかできませんでした。
しかし、時間が経つにつれ、徐々に変わっていって、お父さんが琥博くんに寄り添うような姿が多くなりました。
絆
そんなある日のこと、琥博くんとお父さんが、大きくぶつかってしまいました。
琥博くんのやりきれない気持ちを聞いた琴子さんは、
「繰り返してはいけないということを話し合った方がいいな」
と思いましたが、怖さもあり、どう話したらいいか…と悩みました。
しかし、
「私が切り出さないと何も変わらない」
と思いました。
学校に通っていた頃、そして行けなくなってからも、学校と関わることで自己肯定感が下がって傷ついていた琥博くんが、今は確実に少しずつだけど、前をみていることが普段の会話や一緒に行動することで感じ取れている!
そう感じていた琴子さん。
そのことが、ご主人はどこまで感じ取れているのかがわからず、もどかしさもあったのです。
琴子さんは
「息子の傷をこれ以上深くしてはいけない、話し合って我が家なりの安心基地を築く」
という思いを胸に強く刻みました。
すると、夕飯を作っている時に、琥博くんが、
「ボクが作る、父ちゃん仕事で疲れてるから、ピリ辛なおつまみを作る!」
と言って、サラダとウインナーを刻んでピックを刺した2品を作ったのです。
琴子さんが「昨日イヤな思いしたけど、優しいね」と言うと、
「ボクも被害妄想があったから」と琥博くん。
「このことはきちんと伝えよう」
そう思い、帰ってきて顔つきの険しいお父さんに切り出しました。
話し出して、最初は以前と同じパターンの逆ギレでした。
しかし琴子さんは、「責めているのではないこと、」「自分たちが親からされてきてイヤだと思うことは琥博くんにはしたくないこと」「家族だから話し合って分かり合いたいこと」「お父さんも大切な存在だということ」そして固まって言葉が出ない琥博くんの思いを代弁して、何度も伝えました。
すると、お父さんが琥博くんに謝ってくれたのです。
そして、琥博くんが料理を作ってくれたこともお礼を言い、
「こんな父ちゃんだけどよろしくね」
と言ってくれました。
まだまだ全てが伝わったわけではないだろうけど、こうして話し合いをしていきたい…琴子さんは、そう思いました。
つづく
→ Vol.13 学校との関わりについて書いた手紙 を読む