コミュニティ「HSC親子の安心基地」では、毎週水曜日10時~「HSC子育てラボ」主催のオンライン勉強会を開いています。

7月3日に行われた勉強会は、HSPである斎藤 裕医師(「HSCを守りたい」の「1章・2章・6章」原案執筆)を講師に迎え、『共依存』について学びました。

『共依存』がテーマに選ばれたのは、以前の勉強会でテーマになった『自分軸』がきっかけでした。

HSCであるわが子の気持ちに寄り添う、

わが子の心を守る、

それを実現するにも、身についてしまっている『過剰適応』『過剰同調性』が課題となり、つい“軸”が「子ども」や「自分」ではなく、周囲の相手に置かれ、恐れや罪悪感に支配されてしまうから。

それでは、どうしたら軸を「子ども」や「自分」に引き寄せられるだろうか・・・。

そこで切り離せないと感じられたのが『共依存』でした。

まずは『共依存』についての知識を得て、「あなたのためを思って、という侵入」について、しっかり境界をつくり、子どもの心を守ることに軸を置けるようになろう。

というわけです。

今回は、精神科医の斎藤 裕氏のお話を、議事録としてまとめたものを公開したいと思います。

※この議事録は、本来「HSC親子の安心基地」アクティブ会員で共有されるものをそのままの形で公開しています。

懐柔型の統制パターンを取りやすいHSC

HSCでは、良い子・良い人の衣を身につけた懐柔型(親の手助けをしたり相談相手になったりすることで、親を支えようとする)の統制パターン、いわゆるAC(アダルト・チルドレン)の中に出てくるような人間関係のパターンを呈しやすいと考える。

例えば、親の顔色を敏感に読み取り機嫌を取る、親の相談相手になる、親の意向を敏感に感じ取る、自分のことは後回しにして親の意向に沿うような行動を取るなどして親の気分をコントロールしようとする。

良い子・良い人として生きていくためには、その時抱いたネガティブな感情を心の奥に押し込んだり、自分にとって受け入れることのできないような考えや感情を合理化(正当化)したり、ポジティブにさせる言葉や考えで言い聞かせたりするといった方法で、自分をコントロールしなくてはならない。

しかしHSCでは、ごまかしやコントロールがきかないことが多い。

そのため思春期や青年期以降、良い子・良い人として生きるために心の奥底に抑え込んできた、不安や空虚感を感じ始めたり、自分という存在の不確かさや自分という存在に対する違和感などのアイデンティティの問題に苦しみ始めたり、嗜癖・依存症などの問題を抱えたりすることも少なくない。

嗜癖(アディクション)・依存症 

・物に対する嗜癖・依存症・・・アルコール・薬物・ニコチン・カフェイン・食べ物(過食) など、

・特定の行動に対する嗜癖・依存症・・・インターネット・スマホ・ギャンブル・仕事・買い物 など、

・人を介する嗜癖・依存症・・・共依存・恋愛・いじめ・虐待(コントロールや侵入を含む) など、

■認識されにくい嗜癖・依存…「面倒を見る」「お世話をする」「お金(物)をあげる」「人の役に立つ」「人の上に立つ」「教える」という行為を通して心を安定させようとするもの。

例としては、『共依存』・『仕事依存』がある。

『共依存』

自分の心の中に閉じ込められた怒りや不満、恐れ、悲しみ、寂しさ、空虚感などの負の感情を紛らわすために、「あなたのために」「あなたのことを心配して」という空気を醸し出しながら、愛情や親切を名目として、「お世話をする」「面倒を見る」「聞かれてもないのに教える」というもの。

それは、負の感情を紛らわすための嗜癖として、「お世話をする」「面倒を見る」「聞かれてもないのに教える」という一面だけでなく、相手の「お世話をする」「面倒を見る」「聞かれてもないのに教える」という行為の中から優越感を得ることにより、自身が抱える空虚感や無力感の穴埋めをしようとする意味合いも含まれている。 

共依存の人がこだわるのは「良い人・良い子」

共依存の人がこだわるのは「良い人・良い子」なので、評価が下がるような嗜癖を選ばない。

評価が下がらないもの=『仕事依存』・『共依存』(相手よりも優位に立つことで心を安定させようとする)

◇◇◇評価を下げないように依存していくのが『共依存』

HSCは忠誠心が高く、良い子であることへのこだわりが強くなっていく傾向にある。

それは親の考えに都合の良い子。

親と別個のアイデンティティがつくられにくい。

他人と自分との間の境界の壁が薄く、他人の思いや感情の影響を受けやすい。

親が、相手にとって良い人を演じることで思いや感情を押し殺した分が、壁の薄い子どもに風邪のように移って、子どもに症状や親を困らせる行動が出ることが…。

例:義母と話す→子どもにじんましん→実は良いお嫁さんモードで、相手の失礼な言葉に気づかず流していた→負の感情の蓄積→子どもに風邪のように移る

◇◇◇怒りも不満も自己主張が必要。不消化な感情が影響

この人イヤ、と認めること。認められれば関わらなくなる。それが自分の心に誠実であるということ。

乗り越えようと思うと無意識レベルでその相手に近づいていく。

相手との間にしっかりとした「境界」を築くために、『自分軸』で生きることを心がける。

生まれ持った気質(生まれつき備わった性質)=本来の自分

育つ環境や人間関係(特に親との関係)に適応していくために後天的につくられていくのが、社会的性格・役割性格

I was born by my parents(親によって生まれさせられた)という事実が存在するのだが、子どもを育ててあげている、子どもは親に感謝するのが当然という感覚を持っていて、親のほうが正しい、親の枠に当てはまらない子はダメな子という規律・枠をつくってしまっていると、ありのまま感じありのまま表現できない(抑圧などの防衛機制が働いていく)。

お兄ちゃんとして・お嫁さんとして・親から良い評価を受けるために成績優秀な良い生徒として・模範的な社員として(後天的につくられていく性格:役割性格・社会的性格)=それらの多くは自発的な意志・判断によるものではなく、社会的責任を背負わされたもので、本来の自分とはかけ離れていく場合が多いのだが→それを“本来の自分”と思ってしまっている。

相手の気持ちを優先することも良いことじゃないか、と思うなど→自分の気持ちを抑圧していく。自然に湧き上がった負の感情も見ないように感じないようにしていく。

どこかで、誰かに発散→伴侶や子どもに八つ当たりなど。

何かで紛らわす→買い物・スマホへの嗜癖など。

光と影

怒りや不満、反感があるのに親が強すぎて圧力やコントロールがあると、親にとって良い子として生きる一方で、閉じ込めた本当の感情をどういう形で処理していくか→症状として表れる(頭痛・肩こり・じんましん・発熱・嘔吐など)、怒りが憎しみに代わり自分に向かう(リストカット)、満たされない心の飢えを食べ物で満たし、負の感情を吐き出していく(過食・嘔吐の繰り返し)。

これらは子どもの問題ではなく、親との関係に起因したもの。

対人関係の基礎は、幼少期の“愛着”という信頼関係からつくられる

親からの十分なスキンシップと反応豊かで愛情深い関わりの中から、親は自分のことをわかってくれる、助けてくれる、守ってくれるという安心感・信頼感の内在化と、その積み重ねによって、安定した愛着が形成され、その安定した愛着を土台として、自然と子どもは親から巣立っていく。

この愛着が不十分だったり、愛着をつくるもっとも大切な時期や、母子分離不安が高まっている時期(3歳頃まで)に、親から離されたりした場合、愛着関係に傷が入り、愛着の土台が不安定になったりすると、親との関係だけでなく、親以外の人との関係も不安定になりやすくなる。

つまり、幼少期の愛着が不十分だったり、安定した愛着が形成されなかったりすると、その後の対人関係も不安定になりやすいということ。愛着形成は、対人関係の基本中の基本であるということ。

特に敏感で繊細な遺伝的気質を持つHSCでは、その傾向が強いため、5歳頃までは慎重に対応する必要がある。

このデリケートな時期に、「人の手に預けられる」「習い事に通わせられる」など、無理やり親から引き離されるという体験をしたHSCでは、かなりの頻度で、以下のような分離不安障害が起こっているものと考えられる。

〈『小児期の分離不安障害』の診断基準:ICD(国際疾病分類)-10.医学書院.P278-279より抜粋〉

診断の鍵となるのは、愛着の対象(通常両親あるいは他の家族成員)から別れることを中心とした過度の不安であり、さまざまな状況に関する全般的な不安の単なる一部分ではない。この不安は次のような形をとりうる。

強く愛着をもっている人に災難が降りかかるという非現実的な、現実離れした心配に心を奪われる。あるいは彼らが去って戻らないだろうという恐れ。

迷子、誘拐、入院、あるいは殺されるという災難によって、強く愛着をもっている人から引き離されてしまうという非現実的な心配に心を奪われること。

・分離の恐れのために、(学校での出来事を恐れるというような他の理由からでなく)登校を嫌がり、あるいは拒否し続けること。

・強く愛着をもっている人が近くか隣にいなければ、眠るのを嫌がり、あるいは拒否し続けること。

・一人で家にいること、あるいは強く愛着をもっている人なしで家にいることへの持続的で度の過ぎた恐れ。

・分離に関する悪夢を繰り返す。

・身体症状(悪心、胃痛、頭痛、嘔吐などの)が、強く愛着をもっている人からの分離をともなう状況の際に繰り返し起こること。たとえば家を離れて学校に行く場合。

・強く愛着をもっている人からの分離を予想したとき、その最中、あるいはその直後に、過度の悲嘆を繰り返すこと(不安、泣くこと、かんしゃく、みじめさ、無感情、あるいは社会的引きこもりとして現れる)。

(例えば)子どもを習い事に通わせること

本当に自発的な意志で選んでいるか?

自我が確立される(自分で考え自分の意志で判断して行えるようになる)時期までは、子どもがあたかもそれを望んでいるかのように誘導したり、大人の考えを植えつけたりしないほうが良い。

本当に好きなのか嫌いなのか、自分の気質に合っているのか。

しつけや大人の価値観の押しつけをせず待ったほうが良い。

■愛着関係の傷を回復させるためには、愛着の絆を結び直す必要がある。

できる限り子どものそばにいてあげて、共感的に子どもの気持ちを汲み取って、その子の求めに愛情をもって応えようとする関わりが重要。

以上です。

参考文献…『愛着障害』岡田尊司/著 光文社新書、『愛着障害の克服』岡田尊司/著 光文社新書、『発達障害と呼ばないで』岡田尊司/著 幻冬舎新書

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