HSC子育てラボのコミュニティ「HSC親子の安心基地」勉強会。
4月は、入園・入学の時期ということもあり、「学校との関わり・HSCについての伝え方」について話し合われました。
学校との関わり
登校渋りや不登校には段階がある
子どもが登校を渋ったり、学校に行けなくなったりすると、親は学校への連絡や、面談など、学校との関わりが増えます。
多くの親にとっては、子どものことだけでなく、学校との関わりも悩みの種になっていて、疑問や不安を抱えています。
そこで学校への対応の仕方について考えを深めていくと、「登校渋りや不登校には段階がある」ということに気づきます。
・嫌がるが登校はしている
・渋りだして/行かなくなって間もない
・渋りだして/行かなくなって数か月がたつ
・渋りだして/行かなくなって長期間に及ぶ
・行かないことにしている
「HSC親子の安心基地」のメンバーも段階はそれぞれ違い、「確かに段階があるよね」という話になりました。
親の心境にも段階がある
子どもの行き渋りや不登校に段階があるように、親の心境にも段階があります。
・強い不安や葛藤
・不安や葛藤はあるが、情報などを得て少し弱まる
・時々不安
・だいぶ落ち着いた
・腹落ちした
子どもが不登校や、学校に行かない選択をしていることを落ち着いて捉えている親御さんも、
多くは強い不安や葛藤の段階がありました。
「不安や葛藤の状態は段階で変わっていく」皆が実感していることです。
罪悪感を抱かせる働きかけや言葉
「でも、先生や身内など、他の人からの働きかけや言葉にモヤモヤすることがある」
それも実感です。
HSCや、学校に行きたくないという子どもの“つらさ”がいったいどんなものなのか、
想像できる人がたくさんいるわけではありません。
相手が「学校には行かせた方がいい」という考えの方だったらなおさらです。
学校へ行くのは「良いこと」「正しいこと」「必要なこと」と思っているので、
学校へ行かないことに罪悪感を抱いてしまうような声かけ・働きかけがなされるのです。
例えば、「先生もクラスのみんなも待ってるからきてね」
「この子の将来のためを思って学校に行けるように、と言っているんだ」などなど。
つまり、不安や葛藤が和らいできても、このような言葉かけ、働きかけによって、親御さんの心が揺さぶられたり、また不安や葛藤が強い状態に戻ったりすることがあるのです。
HSCを育ててきたお母さんは特に、子どもさんの敏感さや繊細さ、意志、苦手感、困り感といったものを誰よりも感じ取ってきています。
それを見ないようにして学校に適応させようとすることが、本当に子どもの将来を良くするのか、それとも自己肯定感や主体性が削がれてしまうのか…やっぱり考えます。
結局は、自己肯定感や主体性が削がれても、誰も責任を取ってはくれません。
本人か、場合によっては親がその責任を負わされるのです。
そこで、信田さよ子さんの本から、以下の部分を引用してシェアしました。
子どもを飢えや貧困から守るという第一義の義務が後景に退いてしまった結果、もっと別のものから子どもを守るという役割が生じたのです。それは、社会の常識や規範、「ふつうであること」の強制から子どもを守ることです。
ふつうであることから逸脱しないようにひたすら調教し教導していく親なのか、それとも逸脱したわが子であっても、その子を守るのは親である自分でしかないと覚悟する親か、そのいずれかが厳しく問われる時代になったのです。つまり子どもを守るためには、世界を敵にまわせる覚悟のある親かどうかを問われる時代になったともいえます。
それを誰よりも見分けているのは、ほかならぬ子どもたちです。(『子どもの生きづらさと親子関係―アダルト・チルドレンの視点から 』(子育てと健康シリーズ)/大月書店 P121より抜粋)
「優先したいこと」を前提にしておく
学校との関わりは、「優先したいこと」を前提にしておくとスムーズです。
・学校に行かせたい
・とにかくしっかり休養させたい
・学校以外を含む選択肢を模索したい etc…
学校へのニーズをはっきりさせる
「優先したいこと」が何かによって、学校へのニーズも違ってきますね。
・かなり協力してほしい
・お断りしたいことがある(連絡帳・配布物・家庭訪問・宿題など)
・HSCを知ってほしい
・そっとしておいてほしい etc…
「違和感」「困り感」「つらさ」を言語化する
学校へニーズを伝える時、子どもが感じている
「違和感」「困り感」「つらさ」をしっかり把握し、言語化できると伝えやすいです。
・やりたくないことも、絶対にやらなければならないのがつらい
・授業の時間は他のことが何もできないのに長くてつらい
・目立ちたくないからそっとしておいてほしい
・宿題に縛られるのがつらい
・教室の騒がしさや先生が怒る声がつらい
・給食がつらい
・運動会や行事の練習・本番がつらい
・何のための学校なのかどうしてもわからない etc…
先生方は、だからどうしてほしいのか、どうしたいのか、というニーズをはっきり伝えられた方が対応しやすいのだそうです。
これまでにお話を伺った校長先生はお二方とも、「親御さんがニーズをはっきり言ってくれた方がいい」「ほとんどのことには工夫や対応ができる」と教えてくださいました。
一方で、どうしても話が通じない場合や、驚くような言葉を児童に投げかける先生がいらっしゃるのも事実のようです。
ちょうど次のようなツイートを見かけ、参考になるという方もいらっしゃると思ったので紹介します。
以前、小児科医と話した時、「話が通じない教員が担任になったら、残念だけどその一年は不登校を勧めている」と言っていた。その時は驚いたけど、話しが通じない学校を経験した今では素晴らしい助言だと思う。教員からのいじめやハラスメントによる子どものダメージは大きい。安全安心を奪われる。
— hana (@hana17986674) 2019年4月22日
HSCについての伝え方
HSCについて、先生にどのように伝えたらわかってもらえるか…
これはHSCの親である私たちの大きな関心事であり課題でもあります。
HSCについての本の一部をコピーして持っていく、という方法は多くの方が実践しています。
先日HSCに関するコラムが紹介された「教育新聞」のWeb記事も、先生に渡しやすい印象でした。
とはいえ、まず、HSCについて先生に伝えるかどうか…意見は分かれました。
そして、“わかってくれる先生”でなければ、やはり伝わらないという実感が多く聞かれます。
中には、根気強く伝えることで、先生が次第に深く理解していってくださったというエピソードも。
話を聞くと、その先生だったら…という何かが感じられていたから根気強く伝え続けられたのかもしれないとも感じました。
また、学校や先生を批判したいのではないこと、むしろ先生の大変さを重々想像したうえで、あくまでもニーズを伝えている、という姿勢で関わることを大事にしているという意見は皆共通のものでした。
私の経験上、ほかにも次のようなことを心がけました。
・伝えたいことを紙に書いて渡し、共有する
※校長先生にも同じものを共有していただきました。理由は、もし自分が伝えたニーズが学校の方針に合わないものであれば、先生に負担や気苦労をおかけしてしまいます。その点、校長先生も情報を共有して容認していただいていれば、先生も身動きが取りやすく、結果的に子どもの気質や心が守られると思ったからです。
・「家族で話し合って決めた」と、はっきりとした意志を持っていることを伝える
以上が、今回の勉強会で話し合われたポイントです。
まとめ
最後に、HSC、わが子の登校渋りや不登校について先生に伝える際のポイントをまとめます。
①登校渋りや不登校に関して、子どもや親自身の段階を把握する
②罪悪感を抱かせるような働きかけや言葉に引っ張られないよう、子どもの心を守ることに軸を置く
③子どもの「違和感」「困り感」「つらさ」などを把握し、優先したいこと、ニーズを明確にする
④伝えたいことと一致している資料があれば、渡せるよう準備する
⑤担任、もしくはわかってくれる先生に伝える(重要なことは紙に書き、できれば校長先生にも共有していただく)
⑥先生の大変さを重々想像したうえで、あくまでもニーズを伝えている、という姿勢で関わることを大事にする
(文:心理カウンセラー 斎藤暁子)